選手とコーチが一流になるほど、試合中に交わす言葉は最小限。

安西光義。作中では安西先生と呼ばれる事が多いため、下の名前を憶えている人は

ほとんどいないのではないでしょうか。現役時代は全日本代表に選ばれるほどの

実力をもち、その後は名門大学の監督へ。とある出来事をきっかけに辞職し、現在は

桜木達が通っている湘北高校の顧問を務めています。

 

名言が数多く存在するスラムダンクにおいて安西先生も名言製造機であり、特に試合中で放つ言葉はインパクトの大きいものが多く、毎回読者を震わせてくれました。

その中でも特に皆さんの頭に残っているのは

 

諦めたらそこで試合終了だよ

聞こえんのか?あ?

 

この2つではないでしょうか。どちらもほんの一言。でもその一言の言葉の力が

ものすごく大きいんですよね。上の一言は中学時代の三井、山王戦の桜木にかけた

言葉であり、その後三井は逆転のシュートを、桜木は追い上げのきっかけを

つくりだしました。

 

下の一言は山王戦で桜木に対して。敗北濃厚になり交代させられた桜木は、安西先生が勝負を投げたと思い怒りに震えます。ベンチに座り試合をよく見るようにと指示する

先生を無視する彼に対して言うのでした。その時の気迫は、ベンチにいた全員が

一瞬目を疑うほどに。

 

その他にも紹介したい名言が山ほど存在するのですが、選手に対してかける言葉は

ほとんどが短い一言なんですよね。湘北という赤木と木暮さんが土台を作り上げた

チームを心底信頼しているからこそ、安西先生の言葉は必要最低限で彼らの心を

動かす。かけられた選手達も、安西先生を信じ一言で返す。

 

よくここのあれがこうでこうなるからこうしてこうのああだ…と1から10まで説明する

監督がいますが、人間は忘れる生き物です。あの短時間で覚えきれません。要所要所で的確な言葉をチョイスし、選手のモチベーションがあがるような質問をする安西監督。

勝負師と言われるその手腕は、さすがの一言に尽きます。

 

そしてNBAにおいてはことさらです。もちろん戦術を確認する際は細かく説明する

ときもありますが、技術も超一流の選手達に1から10なんて説明してたらこいつ俺の

ことなめてんのか?と反感買われます。

 

選手とコーチの会話で私が好きな話が、若かりし頃のジョーダンとその時ブルズを

指揮していたダグコリンズコーチのやりとり。その試合、前半あまり調子の出ない

ジョーダン。ハーフタイムが終わり後半戦へ向かおうとする彼に対し一言、

 

本気じゃないだろ?

はい。

 

毎回前半調子の良くないときはこのやりとりだったみたいです。そしてこのやりとりを

した後は必ず後半爆発的に点を取ってベンチへ帰ってくるとコーチは話していました。

いきなり豹変するのは相手にとって脅威以外なにものでもないですね…。

 

40分というバスケの試合時間の中で、選手達の精神状態は常に変化します。心情の

変化も丁寧に描いているのがスラムダンク。そしてその変化を先生達がどのように

対応しているのかを注意して読むと、また違った楽しみ方が出来るかもしれません。

 

中学の試合、ファールするぐらいの気持ちで止めろと言われ本当にファールしたら怒られた羊と羽根でした。

いつか、本物のジョーダンに会いたい。